Affect Pathwaysのロゴのりんごの木は、Dr. GreenspanのLearning Treeモデルから来ています。
りんご(結果)が実るのは、成長に必要な要素がたっぷりと含まれている土にしっかりと根を張り、太陽や気候条件などの環境が揃っていることが重要になります。
良い土壌が育っておらず、うまく環境調整ができていないと、成長に不可欠な機能がきちんと働かず、発達障がいがなくても困りごとがたくさん出てきます。子どもの困難が困難を呼ぶ二次的障害、三次的障害を防ぐため、Affect Pathwaysではボトムアップ・アプローチを使い、周りの環境を調整するお手伝いをしながら親子支援を行います。
木の幹の部分には9つの発達段階がありますが、人の一生においては16の発達段階に分けられています。
Affect Pathwaysでは主に未就学児の基本発達段階1-6の支援に働きかけをしています。
1-9の発達段階 (D)
1. 外界への関心と情動の調整(0-3ヶ月)
注意を共有する段階にさしかかっているか。最初の数ヶ月で、自分の内的感覚に気づき、そこから生まれる感情を周りに伝えることを学びます。伝えるためには、周囲の世界への注目が必要であると同時に、周囲の人間も欲求を満たすために努力する必要があります。つまり、大人と子どもの注意(Shared Attention) を合わせていく必要があります。感覚処理能力には個人差があるため、子どもの最も好む刺激を探していきます。
2. 周囲との関わり(2−5ヶ月)
親の温かさや親しさに反応し、関わろうとしているか。大人と子どもの注意がマッチすると、感情的な相互交流が始まり、やりとりが豊かになっていきます。ここから知能を獲得する基盤が形成されます。また、親や関わる人の声の調子や表情から、その感情や意図を読み解くことができてきます。パターンを読み取り、読み取ったことを意味に応じて分類することも可能になっていきます。
3. 意図の芽生えと双方向コミュニケーション(4−10ヶ月)
意味のあるやり方でやり取りができるか?賛成反対を示すためにうなずいたり首を振ったりしているか。なにかほしいときに手で示したり声で意思表示したりしているか。自分の感情を、声や身振りや表情などシグナルに変えて周囲に伝えるようになります。親は子どもからのシグナルを出来るだけ正しく読み取って反応する必要があります。これが双方向のコミュニケーションにつながり、言葉がなくてもコミュニケーションができるようになります。この時期には、意向性やジェスチャーが芽生え、大人と同じような理にかなった因果関係のあるコミュニケーションを始めます。自分の行動と他人の行動を区別するようになり、自分の意図や目的を実感するにつれて、固有の意思も芽生えていきます。自我の誕生です。
4. 問題解決、感情と行動のコントロール、自己意識の形成(10−18ヶ月)
コミュニケーションを開始し、終了できるか。問題を解決しようとしているか。双方向のコミュニケーションができるようになると、身近な問題を解決できるようになります。親との感情的な関わりの中で自分の感情を言葉で表現できるようになっていきます。身振り手振りのボキャブラリーが増えたことで、自分を表現する方法がより複雑になり、その表現力とともに、創造性を発揮するようになります。 追いかけっこのゲームに自分なりの要素を加えたり、母親を真似ながら自分なりのアイディアを加えたりできるようになります。 さまざまな感情を表現するための多様な行動語彙が増えてきます。
5. シンボルの創造、言葉と観念を身につける (18−30ヶ月)
新しい考えを生み出し、自分の意思や希望や願望や感情を表現しているか。言葉が出て、ゴッコ遊びをし、絵を描いたりできるか。言葉を理解し、日常で使用できるようになるには、複雑な感情を様々な形で相手に適切に伝えることができるようにならなければなりません。感情を表すシグナルや言動は、言語の発達につながり、より高度な知能レベルに発達していきます。また、シグナルを言葉として覚えておくことができるようになります。言語能力が発達してからは、感情が言葉に置き換えられるよう、感情を伴う体験や、やりとりをたくさん経験していくことが大切です。自分の要求や感情を行動や言葉と結び付けることが困難な場合は、この段階に到達するのに多大な困難を伴います。
6. 感情的思考、論理、現実感覚 (30−42ヶ月)
いくつかの考えをつないで論理的に考えることができるか。論理的な思考が発達し、自問自答しながら考えられるようになります。また、自分の考えと他人の考えを論理的に結び付けることが可能になります。
自分の周りに起こっている出来事を、論理的に理解し整理していくことは、膨大な新しい現実を理解するために欠かせないことです。内的な感情体験を外的な出来事と結び付けるようになると同時に、それらを区別することもでき、主観的な経験と客観的な経験を分けることができるようになります。
この論理的思考によって、議論や数学や化学など学ぶ際に使われ新しい技法が育っていきます。
7. 多面的な因果関係と三角的な思考(早期出現4~6歳)
この段階では、子どもは簡単な理由付けを超えて、多面的に理由を考えるようになります。 (例:健くんが私と遊びたがらないのは、私のことが嫌いだからかもしれない。) この能力によって、子どもは2つのことを比較対照できるようになります。 例えば、ある友だちが遊べないときは、別の友だちに遊んでもらうこともできるようになります。 因果関係思考を身につけるためには、子どもは複数の可能性に感情を向けることができなければならないことを理解し始めます。 この段階になると、子どもは家族の関係を、単に自分の欲求が満たされるかどうかという観点からではなく、さまざまな人々の関係という観点から理解できるようになります。
8. グレーゾーンの理解(最も早い出現6~10歳)
多面的で三角的(主張、理由付け、根拠)な考えができるようになると、子どもは物事の程度の違いや相対的な影響力を理解し始めることができるようになります。 子どもはしばしば、要因や相対的な影響を比較検討しなければならないため、これは学校での学習や生活において重要になってきます。 子どもはまた、運動能力、成績などの様々な基準に基づいた社会的な階層を理解し、どこかに所属することになります。妥協を覚えることで、子どもはさまざまな問題、特に集団内で生じる問題を解決する方法を新たに身に着けます。
9. 自己規範の確立、振り返りによる考察および自己意識(9歳頃に最も早く出現)
思春期や青年期初期になると、より複雑な感情的相互作用によって、子どもは自分の内なる規範と関連付けた考えをするようになり、自己意識が確立していきます。 子どもは自分の経験を判断できるようになり、「あの時、僕はいつもより怒ってたんだな」などと言うことができるようになります。 あるいは、仲間の行動を見て、「あの子たちだったら許せたかもしれないけど、僕だったら許せないな」と言うこともできるようになってきます。子どもは推論することを学び、一度に複数の基準に基づいて考えることができるようになります。 既存のものから新しいアイデアを生み出し、過去と未来の両方を考えることも可能になります。 これにより、より高いレベルの知性と、より成熟した思考が可能になってきます。
参考・引用文献
1.Stanley I., Greenspan and Nancy T., Greenspan. 2010. The Learning Tree. Cambridge, MA: Da Capo Press.
2.Stanley I., Greenspan and Serena Wieder. 1998. The Child with Special Needs. Persues Books.
3. Stanley I., Greenspan and Jacob Greenspan. 2009. ADHDの子どもを育む. 創元社. 広瀬宏之訳.
4.Stanley I., Greenspan and Serena Wieder. 2006. 自閉症のDIR治療プログラム、フロアタイムによる発達の促し. 創元社. 広瀬宏之訳.