原始反射(Primitive Reflex) について

 「原始反射(Primitive Reflex)」という言葉を聞いたことがありますか?

 原始反射は手足も動かせず、コミュニケーションがとれない生まれたばかりの赤ちゃんにとっては必要不可欠な反射です。

 原始反射(primitive reflexes)は、生まれた直後からみられる反射的な行動で、反射とは中枢神経(脊髄ー脳幹)が刺激に対して、自分の意思とは関係なく引き起こされる行動です。原始反射は、主に脳幹の働きによって起こります。発育の段階で原始反射が起こることで、脳への刺激となり脳の発育も促される中枢神経発達にも重要です。

 原始反射は消失するのではなく、脳の発達に伴い前頭葉がコントロール(統合)してきます。タンスの引き出しにしまっておく感じを想像してください。原始反射が何らかの原因で残存していると、困りごととして現れるようになると言われています。

 脳の発育は、下層にある脳幹から徐々に上層へ移行し最終的に大脳皮質が発達し脳が成熟します。そして、その過程で大脳皮質(前頭葉)が育ちながら原始反射をコントロールできるようになります。

 私の子どもがアセスメントを受けた際には、非対称性緊張性頸反射(ANTR) がまだ残存していました。ANTRとは、子どもが仰向けに寝て首を左右どちらかに向けると、首を向けた側の手足が伸びて、片側の手足が曲がるという動作です。ANTRが残っていることにより、絵を書いたり字を書いたりするのを嫌がったり、本を読んでいても読んでいる箇所を見失ってしまったり、文字と文字の間隔が遠すぎたり繋がっていたり、字が汚かったり。今ではだいぶ改善しました。

原始反射には色々ありますが、今回は以下の反射をご紹介します。

  • モロー反射⇒突然の姿勢変化、音などに驚いて手を広げ身体を丸めて抱き着くことで危険な状況から身を守ろうとします(赤ちゃんが寝ているときの動画などを見ると、モロー反射がよくみられます)

  • 吸てつ反射⇒口に触れたものを吸う反射で、舌をなめらかに母乳を反射で吸うことができます

  • 把握反射⇒ 子どもの手足に何らかの刺激をあたえることで、無意識に握る仕草を見せます(よく赤ちゃんの手に自分の指を出すと指を握る動作です。あれは意識的に行っているのではなく、反射です。)

  • 探索反射⇒口付近に触れた方向に頭を向ける反射で、触れた指や乳首を探すかのように左右上下に首を回す動作です(よく赤ちゃんの唇を指でなでると、おっぱいを探しているかのように口を開けて顔を動かします)

  • 緊張性迷路反射(TLR)⇒うつ伏せでも頭を反射的に起こすことができます。前庭感覚への入力をきっかけに(顔や体が色々な方向に動くことによる感覚入力)緊張が入る反射です。具体的に言うと、身体が後方に傾くと伸展緊張が入りやすくなり、前方に傾くと伸展緊張が抜けて屈曲しやすくなります。また、TLRは恐怖心とセットになっていることもあり、この反射を理解していると良く仰向け(歯医者の椅子に仰向けで寝る際やプールやお風呂で仰向けで浮かぶ際など)子どもの中には怖くて、どうしてもできないという子の背景を理解してあげることができると思います。

  • 非対称性緊張性頸反射⇒首の動きによって反射的に手足を動かすことで寝返りがうてます

  • 対称性緊張性頸反射⇒腹ばいからハイハイに移行できます

 

 この原始反射を統合するためのエクササイズや遊びは色々ありますが、私達のお願いしていた作業療法士からは、Rhythmic Movement Training (RMT)のプログラムを紹介され、実践してきました。我が家では私が童謡を歌いながら行うため、子どもは楽しくマッサージをされている気分でいつも喜んで受けてくれています。

 こちらの動画はRMTについてわかりやすく説明されています。また、動画にはそれぞれの原始反射が残存していることによる困りごとも説明されています(英語)。動画内では靴を履いていますが、我が家では裸足で行っています。親子のスキンシップの時間としても、おすすめです。

動画は英語で説明されています。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLcd2f2HDgQLViwHlXjpRrYgx5iuDnbXQ1

参考・引用文献

  1. Mellilio, et al. Retained Primitive Reflexes and Potential for Intervention in Autistic Spectrum Disorders. Neurol., 07 July 2022. Sec. Pediatric Neurology. Volume 13 – 2022. https://doi.org/10.3389/fneur.2022.922322

  2. Konicarova & Bob. Principal of Dissolution and Primitive Reflexes in ADHD. Activitas Nervosa Superior 2013, 55, No. 1-2. https://link.springer.com/article/10.1007/BF03379598

  3. 一般社団法人ここからだ. 原始反射とはhttps://link.springer.com/article/10.1007/BF03379598

  4. Blomberg, Halard & Dempsey, Mona. Movement That Heal:Rhythmic Movement Training and Primitive Reflex Integration. July 1, 2011. 

日本語版DIRフロアタイムの本が再出版されました

2023年6月、アメリカの医師会が自閉症児に行ってきたABA治療の支援を撤回したことで、発達論的支援DIRFloortime®がより注目されるようになってきました。日本では、まだ認知度の低い発達支援法ですが、すでに世界70カ国以上で取り入れられています。

今回、そのDIRフロアタイムを用いた自閉症児に対する治療プログラムの本が再出版されました。日本へ一時帰国された際にぜひ本屋さんで見つけてみて下さい。

アマゾンのリンクはこちら→https://amzn.asia/d/c11LQAU

学校カウンセラーのための研修を開催します

【学校カウンセラー対象研修のお知らせ】

11月2日(木)UNIS ハノイにてインターナショナルスクールカウンセラーのための、メンタルヘルス研修を開催します。

こちらは、UNISハノイとSENIAの共同で主催するイベントになります。

市内で活動する発達支援に関わる専門家と面談する時間も設けておりますので、是非ご登録下さい。

市内のサービスプロバイダー、学校カウンセラーのかたは、こちらからご登録ください。

アジェンダ:

12:45-13:00    Check in/registration

13:00-13:10     Ice-breaker table groups

13:10 – 14:10   Presentation: Neurodivergent Brains: Rejection Sensitivity & Emotional Dysregulation

 Dr. Ton van der Velden & Ms. Sarah Garner, Global Neurodiverse Families

14:10-14:15  Break

14:15 – 15:45  Presentation: Crisis Mental Health Management in Vietnam

Presenters will include:

Dr. Hoàng Minh Đặng, Vietnam National University

Dr. Paul O’Halloran & Mr. Nguyễn Đức Nam, Vinmec Hospital’s Mental Health Center

Ms. Rhiannon Walls, CapacityVietnam

Followed by a table group activity for school counselors to collaborate on next steps

15:30-15:40- BREAK

15:40-16:00 Service Provider Introduction

PPT & introduction of service providers who are in attendance or submitted slides

Review of the SENIA List of Questions parents should ask service providers

16:00-16:30

Meet and greet between counselors and service providers .

DIRフロアタイム講座のお知らせ(日本語)

『個を生かす発達支援法 』DIRFloortime®︎講座(全2日間)
すべての子どもの可能性を最大限引き出す遊びに基づくトレーニングメソッド
2023.11.11 Sat & 18 Sat.
フロアタイム(Floortime)とは・・・米国発の遊びをベースにした発達支援法のことで、発達過程・個人の違い・人間関係をベースにした、子育て全般に活用できるアプローチです。2023年6月には、アメリカ医師会が従来のスタンダード療育であった「ABA(応用行動分析学)」への支持を撤回したこともあり、発達障害者支援の先進国アメリカで今注目を集めています。現在は70カ国以上で導入され、世界各地で専門家によるプログラムの提供が行われています。
この度、 ICLDより11月11日(土)と18日(土)にDIRFloortime®︎の入門講座「DIR101」が開催されます。通常はアメリカの時間に合わせて開催されますが、今回は日中の開催+日本語での実施となる貴重な機会ですので、ぜひお申し込みください。
本講座はDIRFloortime®︎の認定機関である、米国ICDLのフロアタイム実践者から直接学べる日本向けのオンライン講座となります。
説明や資料は日本語で用意されますので、安心して日本語で受講いただけます。
専門機関での療育関係者をはじめ、お子様との向き合い方に悩む保護者に対しても学びのある講座です。
今回の講座は、DIRFloortime®︎の入門編となります。DIRとは何か、これまでの研究にどんな科学的根拠があるのか、またDIRの理論的枠組を応用したFloortime®︎で具体的にどのように子どもたちにアプローチしていくのか、実例を交えながら解説していきます。
開催概要
【DIR101】1日6時間・全2日間、計12時間のプログラム
開催方式:オンライン
開催日時:2023年11月11日(土)、18日(土)
開催時間:各日9:30〜12:30、14:30〜17:30
*両方の日程を受講いただくことを前提としています。アーカイブは残りません。
講師:Aya Porte (Floortime Advanced Provider)
*講座は日本語にて行われます。講座内で使用されるスライドも日本語翻訳版となります。
主催:The International Council on Development and Learning(米国)
講座についての詳細やお申し込みは以下のICDLのウェブサイトよりどうぞ。尚、ICDLではお問い合わせを日本語でも受け付けているとのことです。