ADHD、ドーパミン、反抗の関係 #2

前回の投稿の続きとして、今回は実際に子どもが口答えをしたときの返し方を簡単にステップでお伝えたいと思います。

みなさんも経験済みだと思いますが、ADHDの子どもが口答え・反抗的な態度をとったとき、自分(親)がどう返すかによってその後の流れが大きく変わってくると思います。大人が「対立する」「怒鳴り返す」と、ドーパミンを刺激してさらに口答えを強化してしまうこともあるので、落ち着いた対応はとても重要です。落ち着いて対応するには自分にも心の余裕があることが必要だと思っています。予定を詰めすぎない、自分のための時間を持つ、あなたは何ができるか考えてみてください。

それでは、 ADHDの子どもが口答えしたときの返し方を簡単に説明したいと思います。

ステップ1:感情を受け止める(共感←我が家はこれがないとうまくいきません)

子:「うるさいな!今やろうと思ってたのに!!」
親:「そっか〜、今やろうとしてたんだね。ごめん。言い方がきついとびっくりしちゃうよ。」

ポイント:まず「気持ち」は否定しない(反発されにくくなる)、ただし「言い方」は落ち着いて指摘する。

ステップ2:「選択肢」を与える(対立を避ける)

親:「今すぐやる?それともタイムタイマー5分かける?」
親:「やらないなら、次にやりたいこと(ゲームなど)も遅れちゃうけど、どうする?」

ポイント:命令(〜しなさい)よりも選択肢を出すことで、反抗する理由を減らします。自分で決めさせることで、自主性と落ち着きが生まれやくなります。

ステップ3:行動より先に落ち着くサポートをする

子:「うるさいって言ってんだろ!!」
親:「今イライラMAXだね。落ち着けるように深呼吸するから一緒にどう?それともちょっと落ち着けるまで部屋にいる?」

 ポイント:反抗の裏には「イライラ・不安・疲れ」などの感情があるので、学校から帰ってきたらすぐ習い事にと急かしたり、今すぐ宿題をやりなさいと迫らない。お菓子、飲み物、休憩、などの時間を確保する。まず心を落ち着かせることが優先です。

コツとしては、“火”に“火”を足さない
NGな返し→火を強くする、 OKな返し→火を鎮める
「なんでそんな言い方なの!?」 ⇔「言い方が強かったね、何が嫌だったの?」
「言い返すんじゃない!」⇔ 「そっか〜。じゃあどうしたい?」
「怒るならもう何も言わない!」 ⇔「イライラしてるのはわかった。ちょっと休んで」

言い方の違い、わかりますか?

反抗は、コントロールできない感情や欲求があふれた結果であるとも言われています。思春期などの反抗期もありますが、大人が落ち着いて接することで、安全で安心な環境が生まれ、少しずつ反応も落ち着いていきます。我が家には反抗期真っ最中の子どもがいます。私も落ち着いて接することができるよう、日々の生活の見直しをして、自分に余裕があるよう努力しています。

ADHD、ドーパミン、反抗の関係 #1

ADHDの脳は脳内のドーパミンという神経伝達物質が少なめ、またはその働きが弱いとよく言われています。ADHDの人の薬コンサータを例に取ってみると、ドーパミンが出た元に吸収されるのを防ぐことによって、より多くのドーパミンがニューロンとニューロンの間にとどまり、反対側に吸収されるのを促す役割をします。

ドーパミンは「やる気・快感・ご褒美」に関わる物質です。この不足によって、以下のような特性が現れます:

ドーパミン不足による行動への影響(例)
退屈に耐えられない→ 授業中におしゃべり、動き出す
報酬をすぐに欲しがる→ 待てない、割り込む、我慢できない
感情のコントロールが苦手→ 怒りやすい、口答え、癇癪など

それでは 口答え・反抗はどのようにドーパミンと関係しているのでしょうか?これは、刺激(ドーパミン)を求める行動につながっており、退屈や制限と感じやすいADHDの子どもは、それに対応するため刺激を求めます。

その刺激の1つが、大人との対立や感情の爆発です。

「イライラして口答えする」「親を困らせる」行動が、脳にドーパミンを放出させる刺激になることがあります。つまり、「反抗」や「口答え」は、自分で気づかないうちに脳がドーパミンを得ようとしている行動になることがあります。

また、前回の投稿でも話したように、ADHDの子どもは「感情的に3〜4歳若い」ことも影響しています。「30%ルール」によれば、たとえば12歳の子でも、8〜9歳レベルの感情コントロールしかないことが多く、怒りや不満が湧いたときに、「言い返す・キレる・暴れる」という形で出てしまいやすいことがあげられます。

親や周囲ができるサポートとしては、

感情が爆発する前に気づく →「今イライラしてるね。深呼吸しようか、それとも自分の部屋に行って落ち着いてくる?」
怒っているときは刺激を減らす→ 静かな声、短い言葉で伝える(口論しない)
ドーパミンを健康的に増やす機会を作る→運動、好きな遊び、達成感のある活動をこまめに入れる
ルールより「選択肢」で伝える→ 「すぐ片づける?5分後にタイマーでやる?」など、本人に選ばせる

ADHDの子どもの「口答え」や「反抗」は、単なるわがままではなく、脳がドーパミンを求めているサインのことも。感情をコントロールする脳の部位(前頭前野)が未熟なため、怒りを爆発させやすいと覚えておきましょう。大人が「対立する」のではなく、構造(ルールや流れ)と共感(気持ちへの理解)で支えることがカギです。

次回は、ADHDの子どもの口答えや反抗的な態度を取ったときにどのように対応したらよいか、簡単にお伝えしたいと思います。

知ってる?「30%ルール」

ADHD研究でよく知られているラッセルバークリー博士がいつも講義で言われている「30%ルール」。

今日はこれがどういう意味なのかを説明していきたいと思います。

「30%ルール」とは、ADHDの人は同年齢の発達が定型な人(ニューロティピカルな人)と比べて、実行機能(自己管理に重要なスキル)の発達が約30%遅れているという理論です。たとえば、12歳のADHDの子どもは、実際には8歳半相当の感情的・行動的成熟度である、と言われています。お子さんはどうでしょうか? 年下の子ども達のほうがうまく遊べているということはないですか? 10歳のお子さん、7歳ぐらいと同じ実行機能スキルではありませんか?

ADHDの本質は「実行機能」の欠如とラッセル博士は言っています。実行機能とは、自分をコントロールしたり、時間管理、計画、感情調整などに必要なスキルのことです。

実行機能は解説する人によってタスクの数が変わりますが、内容としては、

1.自己制御 →衝動を抑える、感情のコントロール
2.時間管理 →時間感覚・遅刻回避・締め切りを守る
3.計画と整理 →宿題やタスクの整理・準備・優先順位づけ
4.注意の維持 →集中力を保つ、気が散らないようにする
5.ワーキングメモリ→ 頭の中で情報を保持しながら作業する

という能力です。親は常に30%ルールを頭に入れておくとストレスも少し減るかと思います。

親の対応方法の例としては、

タスクに時間が足りない → +30%で見積もる(10分→13分)
衝動で返信してしまう→ 30秒の考える時間やポーズを入れる
作業に圧倒される→ 30分ごとの小分け作業にする・Pomodoroテクニックを使う
サポートが足りない → 配慮を求める・ツール導入

など、様々あります。

まとめとして、こちらを覚えておきましょう。

1.ADHDの人は「年齢通りに振る舞えない」のではなく、「脳の発達が遅れている」だけ。

2. できないのは怠けではなく、支援が必要な脳の特性。

3.周囲が「まだ30%幼いんだ」と思って接することで、誤解・叱責・ストレスが減る。

もっと詳しく30%ルールについて学びたい方は、こちらのリンクを参照ください。

支援は体の内側からも

お弁当のおかず、皆さんはどんなものを入れていますか?

ドーパミン、セロトニンを出すためにタンパク質や他の栄養素がしっかり取れるお弁当のおかず、それも飽きないようにと毎日計画するのは一苦労です。そんな私は今回日本へ一時帰国した際に、タンパク質がしっかり取れるレシピ本を買って帰ってきました。

今後はワンパターンにならないよう、レシピにも頼りながら体の外側と内側の両方から家族を支援していきたいです。

成田空港でもらえる支援ストラップ

こんにちは。夏休み期間が明け、Affect Pathwaysは本日から3年目の活動再開です。どうぞよろしくお願いします。

また、SENIA Vietnam(特別支援教育ネットワーク・インクルージョン協会)での日本人窓口としての仕事も同じく3年目に入りました。来年度は新しい方に引き継ぎをと考えていますので、ご興味がある方はどうぞお声がけください。

さて、成田空港のインフォメーションカウンターでは、現在ひまわりストラップのデザインとは違ったストラップを無料で配布しています。機会があればぜひカウンターへ寄られてみてください。