触覚の過敏・鈍麻とは?支援のヒント

こんにちは。今日は8つの感覚のうちのひとつ、「触覚」について深掘りします。

触覚は「肌で感じる感覚」で、衣服のタグや風、水、他者との接触などにも関わってきます。

触覚の過敏な子の例:

  • 洋服のタグが痛いと感じる

  • 手をつなぐのが苦手

  • 髪をとかされるのが嫌

  • 裸足でビーチを歩けない

鈍感な子の例:

  • 転んでも叩かれても痛みを訴えない

  • 砂や泥に対して抵抗がない

支援の工夫

  • 過敏な子には「シームレスな服」「タグを切る」「手をつなぐ代わりに手のひらをタッチ」

  • 鈍感な子には「マッサージ遊び」「触覚が強調される素材(Wilburger Brush、スポンジ、ざらざら等)を使う」

明日は、バランス感覚(前庭覚)について見ていきます。

8つの感覚とは?感覚統合の基本を知ろう

こんにちは。今日は、発達障がい支援においてとても重要な「感覚」についてお話しします。
多くの人が知っている五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)に加えて、実は人には8つの感覚があると考えられています。

その8つとは:

視覚(見る)

聴覚(聞く)

嗅覚(においを感じる)

味覚(味を感じる)

触覚(ふれる、感じる)

前庭覚(バランス感覚)

固有受容覚(身体の位置感覚)

内受容覚(内臓の感覚や体内の状態)

発達障害を持つ子どもたちは、これらの感覚のうちどれかに過敏または鈍感であることが多いといわれ、生活に困りごとが出ることがあります。

明日は、これらの感覚の中から「触覚」に焦点を当てて、具体的な支援について考えていきたいと思います。

 

回転について

考えてみてください……「回る(スピニング)」という動きは、定型発達の脳であっても、長く続けると必ず何かしら全身に反応が起こります。

単にフラフラして転ぶとかではなく、本当に体に強い反応、たとえば「吐き気がする」「顔が赤くなる」「吐いてしまう」などが起こります。
これは、脳が自分を守ろうとしている証拠です。強すぎる刺激や影響から脳を守るために、「もうやめて!」というサインとしてこうした反応が出るのです。


なぜ遊園地の乗り物はぐるぐる回るの?

遊園地にぐるぐる回る乗り物があるのは、ただ「興奮したり、強い反応が出る」ということを利用しています。特に、長く回った後に急に回る方向を変えると、脳にはとても強烈な刺激になります。小さい頃、遊園地のコーヒーカップにのった経験を思い出してみてください。私は小さい頃コーヒーカップが好きでしたが、今は乗っても回さずにただ座っています。周りのカップを見ているだけで、十分脳への刺激が入るからです。


回る動きは支援で誤解されがち

学校やリハビリの現場では、「回転運動」が感覚統合の手法として使われることがあると思います。息子の学校でもそうですが、よく理解されないまま安易に使われていることが多いと感じています。

保護者の方も「うちの子、回るのが好きだから良いことなんだろう」と思ってしまいがちでが、
「好きだから=体に良い」とは限りません

中には「回転しても全然平気」な子がいます。それがまるで「すごい特技」のように見られたりもしますが、実はその子の脳が回転の刺激を「脳がきちんと感じ取れていない」可能性があります。


知っておいてほしいスピニング(回転)に関する大事なポイント:

  • 回転運動(前庭感覚:vestibular input)は、脳が受け取る感覚の中でも最も強力な刺激の一つです。

  • たった15分の回転刺激でも、6〜8時間も脳や感情の安定に影響すると言われています(良くも悪くも)。

  • 感覚に課題のある子の中には、回転しても全く反応を示さない(眼球の揺れ=PRNが起こらない)子もいます。

  • 一方で、ほんの1回転するだけで、吐き気など強い体の反応が出てしまう子もいます。

  • 左に回るのは大丈夫でも、右に回ると全く耐えられない――そんな子もいます(左右で感覚の違いがある)子どもも作業療法士の方にアセスメントを行ってもらった際、隔たりがあることがわかりました。右回転でも左回転で違った結果も見られました。


どうすればいいの?「安全な回転運動」のすすめ

ご家庭や療育などでスピニングを使う場合、以下のように「安全に」「少なく」「管理して」使いましょう:

  1. 1秒に1回転のペースで、最大10回だけ回す。
     → それ以上はやらない。必ず一度止まって(1〜2秒)から逆方向に回す

  2. 反応がない子(めまいを感じない子)には、うつ伏せでの回転(prone extension)を取り入れる。
     → これで脳が回転の感覚を学びやすくなります。

  3. 自由に・長時間回るのはNG。脳に負荷をかけすぎる恐れがあります。


実際にあった話

息子の通う学校では、生徒を支援するための取り組みのひとつとして、トランポリンが設置されています。これは、子どもが落ち着きを取り戻すために、「固有受容感覚(こゆうじゅようかんかく)」という体の動きを感じ取る感覚に刺激を与える目的で使われています。

固有受容感覚とは、たとえば自分の体の位置や動き、力の入れ具合などを感じる感覚のことです。この感覚をうまく刺激することで、体や心のバランスを整え、安心感や落ち着きを得やすくする効果があります。トランポリンは、ジャンプすることでこの感覚を強く刺激できるため、感覚統合の一環として取り入れられているのです。

しかし、学校の先生たちの間で、この感覚やトランポリンの効果・使い方についての理解が十分でないことがあります。たとえば、ある生徒が「落ち着いてきてね」と教室からトランポリンに送り出されましたが、その子はただ上下に跳ぶのではなく、いろいろな方向を見たり、体を回転させたりして跳んでしまいました。

こうしたジャンプの仕方は、むしろ感覚を過剰に刺激してしまうことがあります。その結果、本人が興奮状態になってしまい、逆に落ち着けなくなることもあるのです。

その生徒の担任の先生は、「トランポリンを使えば落ち着いて教室に戻ってこられるだろう」と思っていたのですが、実際にはその子は興奮したまま戻ってきてしまいました。このように、支援のための道具や活動も、正しく理解して使わないと、かえって逆効果になってしまうことがあります。


これだけは覚えておいてほしいこと:

  • スピニング(回転)は、感覚に違いのある子には特に慎重に。

  • 回転させるときは「最大10回」「1秒に1回」「左右どちらも」「必ず止まる時間を挟む」

  • 反応がない子にはうつ伏せ姿勢でのスピンを取り入れる。

  • 回転の影響は長く残る。たとえば、5時間前のスピンが原因でドアの音に過剰反応していることも。

  • 実は、 ブランコやハンモックのような前後・左右の「直線的な動き」の方が、脳にとっては有益で安定する効果が大きいので、できればスピニングよりそちらに力を入れましょう。

「回るのが好き=良いこと」ではなく、「どうやって、どれくらい、どんなふうに回るか」が大切なのです。

回転遊びについて

お子さんがぐるぐる回るのが好きなこと、ありませんか?
実は「回る動き(スピニング)」は、脳にとってとても強い刺激です。

▶ 知っておいてほしい大事なこと
回ると、脳に強い影響があります。吐き気やイライラなどの反応が出ることも。

回ったあと、数時間後に情緒や行動に影響が出ることがあります。

「回っても平気」な子は、**脳が感覚を感じ取れていない(感覚鈍麻)**可能性があります。

「好き=体に良い」とは限りません。回転遊びはコントロールが必要です。

▶ 安全な回転のしかた(家庭でできる工夫)
1秒に1回転、最大10回まで。止まってから逆方向へ回転する。

回転に反応しにくい子は、うつ伏せの状態で回ることで、感覚が育ちやすくなります。

長時間、好きなだけ回るのはおすすめできません。

▶ 実は「ゆらゆら揺れる」動きの方が脳には効果的!
ハンモックやブランコなど、前後や左右にゆっくり揺れる動きは、脳の安定にとても良い効果があります。

次回は、もっと詳しく回転についてお話したいと思います。

目指す姿

Affect Pathwaysの活動も2年目が終わろうとしています。この活動も日本語で相談できる場所が必要、という周りの要望から始まりました。私自身も発達障害の診断がある子どもの子育てを海外でする過程で、周りから助けられてきた経験をしているので、このように意義のある活動に関われて幸せだと思っています。私がホームページ内で掲げている目指すべき姿(Vision)について、先日話し合いを持つ機会があり、もう一度振り返る時間を取ってみました。

Visionには、聖書にある御言葉”Love your neightbor as yourself”が使われています。

“Love your neighbor” (隣人を愛しなさい)のあとには “as yourself” と来る言葉。自分を愛しているということは、他人を愛するための重要な土台になるので、自分がそれができているのか振り返ってみました。

それでは、自分を大切にする・自己愛を育むとはどういうことでしょうか。

1. 自分への慈しみを持つ: 特に間違いや失敗をした時には、優しさと理解を持って自分に接する。
2.セルフケアを優先する: 身体的、感情的、精神的に幸せな時間を感じる活動を取る。
3.境界線を設定する: 自分の限界を尊重し、それを他人に明確に伝える。
4.自分価値を認める: 自分の長所や成果を定期的に肯定する。
5.振り返り、受け入れる: 自分の感情を理解し、いやな部分も含めて自分自身を受け入れるために、振り返りの時間を持つ。
6.自分を許す: 過去の過ちにしがみつかず、成長と学習に集中する。

私は、2番と4番がまだまだかなと思いました。皆さんは、どれがうまく実践できていますか?